法月綸太郎『ふたたび赤い悪夢』と熊井友理奈

法月綸太郎の『ふたたび赤い悪夢』(講談社ノベルス)は、著者と同名の探偵が活躍する《法月綸太郎シリーズ》のひとつです。『頼子のために』、『一の悲劇』に続いて三部作の最後を飾るこの長編は、非常に濃厚な本格ミステリです。

アイドル歌手・畠中友里奈がラジオ番組出演後にある男に襲われる。ナイフで刺されたと思ったが、気がついてみると、刺した側のはずの男が死体になっている。錯乱した友里奈は、法月親子に助けを求める。

という形で、物語は幕を開けます。事件そのものには、込み入った要素はなく、探偵の推理は追いやすいです。それでいて心躍る解決がラストに待っているあたりは、流石です。ふたつの芸能事務所の対立の様子なども描かれており、ストーリー展開も非常にスリリングです。さらには、法月綸太郎は「探偵」としての苦悩によって、極限まで追い詰められます。それに対する綸太郎のひたむきな態度には、胸を打たれます。


さて、熊井ちゃんの方へ話題をシフトします。別にたいした話ではありません。要は、この畠中友里奈をBerryz工房熊井友理奈ちゃんだと思って読んでいただけだという話です。苗字こそ全く違いますが、職業は同じですし、地の文では基本的に「友里奈」とだけ表記されていますので、脳裏に熊井ちゃんを浮かべるのはベリヲタの自然な心の流れというものでしょう。「里」と「理」の違いなんてなんのその。「高身長」という描写は、確かどこにもありませんでしたが、勝手に補完していました(笑)。熊井ちゃんを小説で楽しめるなんて、なんという幸せ!
ただ、読み進めていくうちに、様子が変わってきました。この畠中某氏の台詞に、あの熊井ちゃん究極の癒しボイスはどうも合いそうにないことに気づいたのです。あどけなさはあるものの、割とハキハキと答える感じですかね。しかも彼女はソロで活動しています。というわけで、つぎに私の脳裏に登場していただいたのが、真野恵里菜ちゃんです(笑)。「友里奈」と「恵里菜」、字面がだいぶ違ってきましたが……韻が同じなので全く問題ありません。そもそも、高身長ではなかったはずだから、こっちが本当だ! まのえりを小説で楽しめるなんて、なんという至福の時!
と、まあ大変なDDっぷりを発揮した私ですが、物語そのものに引き込まれてからは、「畠中友里奈」はそのまま畠中友里奈として読みました。


なにが言いたいのかよくわからなくなってしまいましたが、まあ、こういう楽しみ方もありだなと個人的に思った次第です。今度は、学校を舞台にした恋愛小説にハロプロメンバーの名前を見つけてみよう(笑)


ふたたび赤い悪夢 (講談社ノベルス)

ふたたび赤い悪夢 (講談社ノベルス)