エラリー・クイーン『ナポレオン剃刀の冒険 聴取者への挑戦1』

ここ数年でのミステリー界での賞賛すべき仕事のうちのひとつに、論創社の『ナポレオン剃刀の冒険 聴取者への挑戦1』(エラリー・クイーン著、飯城勇三訳)があります。
この本は、1940年ごろにアメリカで放送されていた<本格ミステリーラジオドラマ>『エラリー・クイーンの冒険』のシナリオ8編を翻訳したものです。<出版者の序>(ダグラス・G・グリーン)によると、その番組の構成は以下のようなものであったらしいです。


・<問題編>のドラマが演じられる。
・<聴取者への挑戦状>が挿入される。
・ゲスト回答者(各界の著名人)が推理する。
・<解決編>が演じられる。
(ちなみに、放送時間は1時間バージョンと30分バージョンのふたつがあるらしい。)


なんだこの素敵な番組は。
ワクワクが止まらないwww


嗣永桃子ぷりぷりプリンセス』でも是非w
探偵の名前はもちろん<Ellery Queen>ならぬ<Ellery Princess>w
他の役にもBerryz工房の面々を。いや、熊井ちゃんレギュラー回答者に回っていただきたいw
ああ、想像しただけで昇天してしまいそうだ。


閑話休題
論創社の『ナポレオン剃刀の冒険 聴取者への挑戦1』はもちろん<ラジオ脚本>形式で書かれてあります。
でも、読みにくさはまるでありません。登場人物の台詞があって、効果音の指定があって。要はそれだけです。
なによりもラジオ用に書かれただけあって、登場人物の関係は複雑でなく(<犯人当て>なので容疑者はそれなりに出てきますが)、事件の概要や捜査の経緯は煩雑でなく、頭に入ってきやすいです。


「で、おもしろいのか?」
と訊かれたら、私は即答します。
「おもしろいよ」
あるいは、こう答えても素敵だ。
「だってエラリー・クイーンだぜ?」


巻末には飯城勇三氏による熱のこもった解説があります。それを読むと、いかにクイーンが真剣にこのラジオ番組に取り組んでいたかがわかります。細かなテクニックなども拾われていて、著者の実力をあますところなく説明した名解説と云えます。


……ついでにもうひとついたく感心した解説を挙げるならアガサ・クリスティーの『アクロイド殺し』(ハヤカワ文庫)の笠井潔氏の解説です。「簡にして要を得る」とは、まさにこのこと。別版で既読の方もこの解説だけのために買っていい、と思うくらいですw


ナポレオンの剃刀の冒険―聴取者への挑戦〈1〉 (論創海外ミステリ)

ナポレオンの剃刀の冒険―聴取者への挑戦〈1〉 (論創海外ミステリ)

アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)